固定資産評価見直しの実務

固定資産評価見直しの実務


はじめに

総務省の調査によると、土地と家屋にかかわる固定資産税と都市計画税について、2009年度から2011年度までの3年間で97%の市町村体で課税の誤りがあったようです。その割合は納税者0.2%にあたります。この0.2%という数字を見れば、そんなに多くないと思われるかもしれません。しかし、弊社がゴルフ場の固定資産評価の見直しをしてきた経験では、ゴルフ場等の大規模な不動産に係る市町村のミスは、軽微なミスを含めればその100倍以上だと思います。これは、ゴルフ場という特殊な不動産、建物や土地の数が多い不動産を扱うのが大きな要因だと思われます。


見直しに係る地方税法の条文

・地方税法第417条による重大な錯誤による修正
地方税法第417条の規定により、市町村長は、固定資産評価などに重大な錯誤があることを発見した場合には、直ちに修正して納税者に通知することになっています。これは、市町村が発見した場合はもちろんのこと、納税者が発見した場合です。ただし、「重大な錯誤」というのは、明らかなミスと認められる場合で、その錯誤による影響が重大な場合に限られています。したがって、市町村は認めない傾向になります。

・地方税法第432条による審査申出
地方税法第432条の規定により、納税者は、固定資産評価に不服がある場合、3年に1回の基準年度の評価替え時に、納税通知書を受け取ってから60日以内に限り、固定資産評価審査委員会に対して、審査申出を行うことが出来ます。
固定資産評価審査委員会は、審査申出を受けてから30日以内に審査の決定をしなければならないことになっています。ただし、この期間は現実には守られていません。


固定資産評価見直しの実務

ゴルフ場の納税者の方が、市町村に対して見直しをお願いする場合、以下の流れになります。

まず、固定資産税の納税通知書を基に、課税されている不動産と実際の不動産を比較し、固定資産評価の間違いについて調べます。このような固定資産評価に精通したプロの場合、この段階で、どの部分が怪しいか分かるものです。

次に、市町村に各種資料を請求します。土地については、地番図、航空写真、評価の具体的な計算過程が分かる資料です。建物については、非木造家屋評価額計算書等の評価の具体的な計算過程が分かる資料です。この場合、土地については、評価替えごとに新しく評価し直すので問題ないですが、建物については、建物が竣工したときの評価がベースとなるため、当時の資料を文章規定で廃棄している場合もあるので、注意が必要です。

お手元にある竣工図、見積書、設計図書などに基づいて、資材ごとに評価の過程に間違いがないか、各種係数は適当か検証します。

このあと、多くの固定資産評価会社は、市町村への審査委員会への審査申出するように記載していると思いますが、いきなり、そのような対応は好ましくないと考えています。
市町村の審査申出は、固定資産評価では、訴訟を除けば最終判断となります。したがって、いきなり最終判断を仰ぐのではなく、市町村とじっくりコミュニケーションをとって、ゴルフ場の考え方を伝えていったほうが良いと思います。

なお、審査申出のうち、納税者の意見が認められるのは大阪市の統計では4%くらいと極めて少ないです。審査申出を対応する固定資産評価審査委員会は、固定資産課税台帳に登録された価格に関する不服を審査決定するために、地方税法に基づき市町村長から独立して設けられた第三者機関で、中立的な立場から固定資産課税台帳に登録された価格が適正に評価されたものであるかどうか審査を行うと書かれています。しかし、市町村から任命を受けた審査委員が納税者寄りの判断をするのは難しいでしょう。仕事とは別に、大きな市役所で固定資産評価審査委員をしている知り合いと話したことがありますが、裁判で負けると分かるような明らかなケースは納税者の考えを認めていると言ってました。このことを逆に見れば、裁判で負けると言えないケースではなかなか認めないということでしょう。


申入れまたは審査申出に必要な根拠資料を作成の上、課税庁への申入れまたは固定資産評価審査委員会への審査申出を行います。

課税庁対応または審査委員会対応
評価額の修正または評価額の決定がなされるまでに、数度~十数度、課税庁または審査委員会との対応業務が発生し、期間も数ヶ月から数年に及びます。追加の根拠資料の調査や反論書の作成も必要となります。これらの対応業務を行います。